茶碗蒸しは、だしを使用して作る代表的な料理のひとつで、卵とだしの優しい味わいが魅力です。シンプルな料理ですが、加熱や味つけがうまくいかず食感が柔らかすぎたり、穴があいて「す」が入ってしまい、見た目が悪くなったりという失敗をしたことがあるのではないでしょうか。
茶碗蒸しは、基本の作り方やおいしく作るコツがあります。ここでは、ヤマキがおすすめする茶碗蒸しの基本的な作り方やおいしく作るコツ、蒸し器がない場合の作り方などをご紹介します。
卵料理で重要な卵とだしの黄金比
茶碗蒸しは、卵とだしを基本に、その他調味料や具材を入れて蒸すシンプルな料理です。卵料理は卵とだし(水分)の比率によって食感が変わるので、おいしい茶碗蒸しを作るために、卵とだしの黄金比を覚えておきましょう。
なめらかな食感の茶碗蒸しを作りたい場合は、卵1に対してだし3という比率がおすすめです。この比率よりもだしが多いと固まりづらく、少ないと食感が固めの茶碗蒸しになります。
スーパーで売っている卵には、規格(M、L等)が記載されています。正味重量(殻なしの重量)は、Mサイズの卵が約50g、Lサイズの卵が約60gなので、卵がMサイズの場合は卵1個に対してだし150ml、Lサイズの場合は卵1個に対してだし180ml程度が比率の目安です。
茶碗蒸しにおすすめの具材
茶碗蒸しは使う具材によって、いろいろなおいしさが楽しめます。かまぼこや三つ葉、銀杏、鶏肉、海老、しいたけなどが定番ですが、皆様はどんな具材を入れて楽しんでいますか。
実際に、茶碗蒸しは地域特有の具材を入れて作られています。例えば鳥取県米子市周辺では、茶碗蒸しには春雨を入れるのが定番です。 北海道や青森、秋田では、銀杏の代わりに栗の甘露煮を使った、甘いおかしのような茶碗蒸しが食べられています。栗の甘さを抑えるために、ゆり根を入れることもあるそうです。
豆腐を入れた「空也蒸し」や、うどんを入れた「小田巻蒸し」といったバリエーションもあります。
このように、茶碗蒸しは好きな具材を自由に入れて楽しめるのが魅力です。しかし、水分が多い具材を使うと卵が固まりづらくなるので、黄金比を応用してだしの量を少なくするなどの工夫が必要になります。
茶碗蒸しに専用の容器は必要?
茶碗蒸しを入れる専用のフタ付き容器が発売されていますが、必ずしも茶碗蒸し作りの際に必要なわけではありません。自宅にあるマグカップや湯飲み、どんぶりといった容器でも、しっかりとおいしい茶碗蒸しを作ることができます。
フタがない容器で茶碗蒸しを作る場合は、アルミホイルなどをフタ代わりに被せると良いでしょう。お好みの容器を使って、茶碗蒸し作りにチャレンジしてみてください。
茶碗蒸しに「す」が立つ理由
「す」が立つ、または「す」が入るとは、茶碗蒸しをはじめとした卵料理を作る際に、表面や内部にボコボコと穴があいてしまった状態を指します。「す」が立ってしまう原因は、主に加熱のし過ぎです。
茶碗蒸しを高温で一気に加熱すると、中に含まれる水分が沸騰して水蒸気となります。しかし、卵は水蒸気が発生するよりも先に固まりはじめているため、水蒸気は卵の中から放出されません。行き場を失った水蒸気が卵の中で固定されて穴を作った結果、「す」が立ってしまうのです。
「す」が立っていない、なめらかで見た目も美しい茶碗蒸しを作るためには、ゆっくりと加熱することを心がけましょう。
ヤマキがおすすめする基本の茶碗蒸しのレシピ
茶碗蒸しは、基本的な作り方や蒸し方のコツを踏まえれば、失敗なく作ることができます。鰹節屋・だし屋のヤマキがおすすめする基本の茶碗蒸しレシピをご紹介いたします。
【材料(2人分)】
えび 2尾
銀杏 2~4個
にんじん 適量
みつば 適量
【茶碗蒸しのだし】
卵 2個(M)
だし 300ml
しょうゆ 小さじ2
塩 ふたつまみ
【作り方】
1.卵をといていきます。勢いよく泡立てるように混ぜると空気が入り、「す」が立つ原因になるので注意が必要です。菜箸を容器の底に付けたまま左右に動かして、卵白を切るように混ぜるのがポイントです。
2.卵をしっかりとときほぐしたら、だし・しょうゆ・塩を注ぎます。卵が固まってしまうのを防ぐために、だしは必ずひと肌程度まで冷ましておきましょう。
3.だしや調味料を加えた卵を混ぜ合わせます。卵をとく時と同様に、泡立てないように混ぜるのがポイントです。
4.混ぜ合わせた卵液を、ザルやこしきを使ってこします。卵のカラザや、ほぐし切れなかった卵白をこすひと手間が、茶碗蒸しをなめらかに仕上げるコツです。
こした際にできる泡は、スプーンなどで取り除くと良いでしょう。
5.えびや銀杏などの具材を、容器に入れます。
6.具材を入れた容器に、卵液を泡立たないよう静かに注ぎます。卵は加熱すると膨らむので、容器いっぱいに卵液を注ぐのは避けましょう。
7.卵液を注いだ容器を蒸し器に並べます。
8.容器にフタをして強火で2分、弱火で5分ほど蒸らしたら完成です。火を止めて容器を取り出したら、静かに容器を傾けて火の通りを確認してみます。汁が透き通っていたら火が通っていますが、濁っている場合は様子を見ながら弱火でさらに蒸しましょう。
9.最後に結んだ三つ葉を飾りつけて完成です。
蒸し器がない場合の茶碗蒸しの作り方
自宅に蒸し器がない方でも、フライパンや鍋、電子レンジを使って、おいしい茶碗蒸しを作ることができます。それぞれを使用した際の作り方のポイントをご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
フライパンや鍋を使った作り方
深めのフライパンや鍋を使って茶碗蒸しを作る場合も、蒸し器を活用する場合と注意点はほとんど変わりません。作り方の工程は、以下の通りです。
【フライパンや鍋を使った作り方】
- フライパンまたは鍋に、アルミホイルなどで覆った器を入れる
- 器の3分の1程度の高さまで水を注ぎ、強火にかける
- 水が沸騰したらフタをして火力を弱火まで落とし、10分ほど蒸す
時間が経ったら火を止めて中を確認してみて、真ん中までしっかりと固まっていれば完成です。
電子レンジを使った作り方
ご家庭にある電子レンジでも、茶碗蒸しが作れます。ただし、電子レンジによる加熱は加熱ムラが起こりやすいので、卵1に対してだしを2.5と少なめにする、具材には先に火を通しておくといった工夫をしましょう。
【電子レンジを使った茶碗蒸しの作り方】
- 卵液を用意する
- 火を通す必要がある具材は、あらかじめ火を通しておく
- ラップはせず、500~700Wで1~2分ほど加熱し、表面がボコボコと沸騰する前に取り出す
- W数をできるだけ低い設定に下げ、ラップをかけたら表面が固まるまで数分加熱する
- 取り出してみて、表面が固まっていない場合は様子を確認しながら数十秒ずつ加熱を繰り返す
電子レンジのW数や容器の大きさなどによって、蒸し時間は異なります。上記の時間はあくまで目安として考え、電子レンジで加熱中は様子を見ながら、茶碗蒸しの表面が沸騰する前に加熱を止めるようにしましょう。
また、連続で加熱し続けると卵に熱が通り過ぎて、「す」が入る原因になります。できるだけこまめに加熱を繰り返すのがポイントです。
おいしい茶碗蒸しを自宅で楽しもう
茶碗蒸しはシンプルな料理ですが、おいしくきれいに作るためにはコツがいります。工程ごとのコツを改めて整理しておきましょう。
【工程ごとのコツ】
- 茶碗蒸しを作る際は、卵1に対してだし3が黄金比
- 卵を混ぜる際は泡立てず、空気を入れないようにする
- 使用するだしはひと肌程度に冷ます
- 卵液はザルなどでこす
- 容器いっぱいに卵液を注ぐのは避ける
- 蒸す際は高温にしすぎることは避け、適温を保つ
工程ごとのコツをしっかりと守っていれば、なめらかでおいしい茶碗蒸しを作れるようになります。蒸し器がないという方でもフライパンや鍋があれば、コツも蒸し器で作る時と同様です。電子レンジで作る場合は加熱ムラが起こりやすいので、だしの量を少なくする、具材にはあらかじめ火を通しておく、こまめな加熱を繰り返すなどの工夫を行いましょう。
今回ご紹介した基本の作り方を参考に、ご家庭でおいしい茶碗蒸し作りにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。